自宅で飲食店を開業するとき、物件を借りて開業するのとはどのような違いがあるのかよくわからないとお困りの人はいませんか?
この記事では自宅で飲食店を開業する流れからメリットまで詳しく解説します。
自宅で飲食店を開業する流れ
自宅で飲食店を開業するために必要な手順を3ステップにわけて見ていきましょう。
用途地域の確認
用途地域とは都市計画法によって地域をどの用途でどの程度利用するのかを定めた地域地区の1つで、建物の使い道である用途の混在を防ぐのを目的に決められています。
また用途地域による用途制限に関する規制は建築基準法で定められているのです。
これらのことから自宅で飲食店を開業する際は自宅のあるエリアがどのような用途制限を受けている地域なのかを国土交通省の「国土数値情報ダウンロード」で調べ、どのような業態であれば開業できるのかを各地方自治体で確認することをおすすめします。
東京都都市整備局の資料である「用途地域による建築物の用途制限の概要」には店舗の床面積と用途地域ごとに開業できる業態が記載されているため、事前に目を通しておくと開業できるかどうかの目安がわかります。
例えば店舗の床面積が150m2以下で自宅のあるエリアが「第一種住居地域」であれば表では〇印がついているため、問題なく開業できる可能性が高いでしょう。
参考:東京都都市整備局「用途地域による建築物の用途制限の概要」
参考:国土交通省「国土数値情報ダウンロード」
施設基準の確認
飲食店を開業するには自動販売機以外の全ての業種に必要な基準である共通基準と、業種ごとに定められた基準である特定基準の2項目からなる施設基準を満たす必要があります。
2018年の食品衛生法の改正に伴い、施設基準の内容に変更があったため詳細は各地方自治体の保健所に確認しましょう。
自宅でも安全で衛生的な環境で営業を行うために必要な基準だということを理解することが重要です。
参考:厚生労働省 保健所管轄区域案内
自宅の改装を施工会社に依頼
用途地域を確認し、施設基準について理解したら自宅の改装を施工業者に依頼しましょう。
この時相場感を理解するためにも、必ず相見積を取り、改装の内容とそれにかかる費用が妥当かどうかを比較・検討することが重要です。
自宅で飲食店を開業するのに必要な資格・届出
自宅で飲食店を開業する場合に必要な資格と届出を4つご紹介します。
食品衛生責任者資格
食品衛生責任者とは食品の衛生的な製造や販売の自主管理を行えるようになることを目的とし、2014年に厚生労働省によって改正された「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」でも引き続き各都道府県の条例で設置が義務付けられているのです。
食品衛生責任者の資格を取得するには2つの方法があり、各都道府県の食品衛生協会が開催する食品衛生責任者養成講習会を受講するか、免除条件となる調理師免許等の資格を取得するかのどちらかの方法を選ぶ必要があります。
食品衛生責任者養成講習会を受講する場合、費用は地方自治体によって異なりますがおおむね1万円程度で、申込方法や開催スケジュールは各地方自治体の食品衛生協会によって異なるためホームページより最新情報を確認するようにしましょう。
参考:厚生労働省「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する 指針(ガイドライン)の改正について」
参考:公益社団法人 日本食品衛生協会「全国の食品衛生協会」
防火管理者資格
店舗の従業員+席数が30人以上であれば防火管理者の資格が必要となるため、一般財団法人日本防火・防災協会開催の講習会を受講する必要があります。
店舗の延床面積が300m2以上の場合は甲種講習にて、2日で約10時間の防火管理訓練や教育が行われ、300m2以下の場合は乙種講習にて1日5時間の基礎的な防火管理教育が行われます。
受講料は甲種講習¥8,000、乙種講習\\7,000で、受講する場合は一般財団法人日本防火・防災協会のホームページより最新の開催情報を確認してから申込を行いましょう。
飲食店営業許可
営業許可制度とは公衆衛生に与える影響が大きい34の業種について、食品衛生法に基づいて都道府県知事の許可を受けて営業するよう定めたことを言います。
34の業種には飲食店営業も含まれるため、飲食店を開業するには保健所に飲食店の施設を検査してもらい営業許可書の交付を受けることが必要です。
2018年の食品衛生法の改正に伴い、2021年6月1日より営業許可申請の方法が変更されたため詳細を各地方自治体のホームページで確認するようにしましょう。
参考:東京都保険福祉局「食品衛生の窓 改正食品衛生法の営業許可と届出」
開業届
開業届の正式名称は「個人事業主の開業・廃業等届出書」と言い、新たに事業を開始した時や廃止した時に国税庁に提出します。
書式は税務署か、国税庁のホームページからダウンロードできるため、事業を開始してから1か月以内に最寄りの税務署へ持参するか、郵送するようにしましょう。
自分の住んでいる地域を管轄する税務署は国税庁のホームページから検索できます。
参考:「国税局・税務署を調べる」国税庁
自宅で飲食店を開業するメリット
自宅で飲食店を開業するメリットを4つご紹介します。
開業資金を減らせる
飲食店を自宅で開業すると開業資金の中で多くの割合を占める物件取得費がかからないため、大幅に節約することができます。
利益をだしやすい
飲食店を自宅で開業すると経営にかかるランニングコストも節約できるため、利益を出しやすくなるでしょう。
失敗のリスクが低い
飲食店は開業したからといって成功が保証されているわけではなく、2021年度版「中小企業白書」のデータで業種別データを見てみると、「宿泊業・飲食サービス業」では開業率が8.7%、廃業率が5.9%で全業種中いずれも1位となっています。
しかし自宅で開業することで、家賃などの固定費が節約でき、通勤の負担がなく体力的にも余裕が出て失敗するリスクを下げることができるでしょう。
参考:2021年度版「中小企業白書」
副業にできる
近年飲食店は柔軟な経営形態が増え、週末のみ開いているカフェなども珍しくなくなりました。
このように自宅において副業として経営を開始し、お店が軌道に乗ってきたら本業に切り替えるといった方法はリスクを大幅に下げることができるでしょう。
まとめ
自宅で飲食店を開業するためにはまずその場所で開業できるかどうかの下調べが必要であることなど手間がかかりますが、軌道に乗せてしまえば経営リスクを減らせることがわかりました。
この記事も参考にして、ぜひ自宅での開業も選択肢に入れてみてください。